ディア・ハンター

これは戦争映画ではない

多くの人と同じように、私もかつて印象として残っていたのは、ベトナムでの衝撃的な映像と、スタンリー・マイヤーズクラシックギターが奏でる「カバティーナ」の美しい調べばかりだった。数十年ぶりに見て、この映画は、戦争そのものが主体なのではなく、アメリカという移民国家でそれぞれの文化や宗教を守りながら生きる、どこにでもいる人々が、その時代に刻んだ生活を描いたものであると分かった。

戦争映画というと、敗戦から半世紀がたっても、たんなる反戦、軍部への責任転嫁と被害妄想が多い日本の映画界では、残念ながら、これほど重みのある作品は生み出せないだろう。